ゲームの方にはまっている腐女子のみならず耳に入ってくる無関係な男子からの評判もすこぶる良いので、何度目かの女房と一緒に観てきたのですが、なるほどとても良かったです。
とても丁寧に作られた映画だなと思いました。
事前情報
自分は刀剣乱舞についてはドハマリしている人間が家の中に1人いるものの(笑)、基本は我関せず好きにすればという感じで一応「刀剣の擬人化」という程度は知っているという程度の人間です(正確にはリリース時に3日くらい遊びました)が、まあそのへんの不足は何も関係ないというかそれで十分。
あとは「本能寺の変のあたりの簡単な日本史」を基礎教養として持っていれば、まずは十分でしょう。
つまり標準的な現代の日本人であれば、この映画はほぼ楽しめるのではないかなとも。
歴史改変SF
正直なところ自分は「刀剣の擬人化」は知っていたものの耳に入ってくる「時間遡行軍って何だろう…」程度にも何も知らなかったのですが、なるほど腑に落ちた感じ。
「歴史改変」とそれを阻止するというのがテーマだったのですね。
以下、映画のネタバレを含みます。ぼくは観た人と自分の感想を共有したいので、観てないひとはここでさようなら。
では始めます。
まあ歴史改変と本能寺の変(と言えば信長があそこで死んでいなかったら云々しかないわけですが)というすでに日本で1万回は物語になっている題材から、するすると話に入っていけます。
このはじめての方にも安心な話づくりはなかなか快いのです。
話は基本、ここで歴史改変を行おうとする「敵方」に対して、それを阻止して本来の歴史通りにしようとする「主人公側」の刀剣男士チームの視点で進みます。
そもそも何で敵方が歴史改変をしたいのかは正直今でも自分はよく分かっていないのですが(笑)、それはそれとしてこの方針と対立の構図は分かりやすく、敵を含めたそれぞれのキャラの心の動きや行動も視聴者に違和感を感じさせることなく進んでいきます。1人(厳密には2人)を除いて。
というよりも、この映画の脚本の仕掛けとして面白いなと思ったのは、話を主導する三日月宗近の行動だけが「謎」を含めて話が進んでいくというあたりですね。とはいえ主人公が共感できない行動を続けるのではなくあからさまに「ここ隠してます」と話が進むのでその点での観客おいてけぼりなストレスはまったくありません。これは本丸でのごたごたを含めて同じ。
この流れで話はするする進むので、勝竜寺城での展開もストレスなく進みます。
その一方で秀吉の一連の行動はとても自然なもので、敵味方のさまざまな思惑を含みながらも話は安土城のクライマックスにつなげるべく流れていきます。というよりも僕は「これって仮に刀剣男士と時間遡行軍が何も介入しなくても安土城で会ったら秀吉は信長を殺すよなあ」と本編に先回りして気がついたわけなのですが、おそらくこれは本編を観た観客は等しくそう思うのではないでしょうか。言うまでもなくこれは信長の訃報を聞いた時の秀吉の泣いた後で気がつく八嶋智人の名演と演出の勝利。観客に「おれって頭いい」とも思わせるこころよい流れ(笑)。
その流れでの安土城での活劇については、基本は心ゆくまでイケメンたちの剣舞を楽しめる展開で、これはもうお好きな方にはたまらないのではないかという絵。とはいえズタボロになった三日月宗近が薬を一服しただけで全回復するのは「これって課金アイテム?」というツッコミの心を押さえるのは少々難しかったのでした。
あと、やはり述べておきたいこの映画の最大の(ネタバレを避けたい)トリックとしては、これは三日月宗近の行動の謎にもかかわる話だったわけですが「この映画での『正しい歴史』というのは僕らの知っている歴史ではなく信長が安土城で死ぬという歴史」ということだったわけですが、これは読めなかったので「あっ」と心の中で声を挙げてしまいましたよ。歴史改変ものというネタを逆手に取り、そしてその流れですべての登場人物のセリフが符合した脚本。お見事。
続くラストの本丸決戦は、まあここでも新メンバー加入という一幕(これも伏線の回収)があり、まあ無難に収めた感じ。この映画の地味にスゴイところは、きっちりすべての伏線を回収するうえ、回収するところではあらかじめそのシーンを流すという親切設計にもあるのですね(笑)。
審神者
あとは審神者の交代という本丸イベントを無事に終えて綺麗に終了。
ところで審神者と言えば言うまでもなく腐女子プレイヤーのことでもあるわけですが、この映画の審神者登場のシーンでしばしば大写しになったあのペンダントは当然ながら公式グッズで出ているのかなぁと思ったのですが、え、ないの?(笑)
ともあれ、大変よくできました。
いやあ映画って本当によいものですね。
本編には関係がないのですが、本編を観る前の予告でカップルの彼女が謎の病気で死ぬ別々の映画の予告編を3つやったというのは「邦画ってクソ」と思わせるに十分なエピソードでしたが、本作のような良作を観ると、邦画もまだまだ捨てたもんじゃないねと思いました。
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