ミャンマーに居る関係で半月遅れで、やっと日本で日本語つきを観る事ができました。
40年来のスターウォーズ大好きっ子な自分としては、この映画、公開直後から酷評するひとが普通に散見され、さらに「賛否両論」と話題を呼んだものの、ネタバレのない範囲でそれらを読む限り「絵」についてはまあ絶賛を含めてそこそこ褒めているひとも居るものの脚本について褒めているひとがゼロであるという驚くべき状況であったため、非常に期待しつつ元旦に吹き替え版を観に行きました。
…鑑賞終了。
さすがにここではもうネタバレを気にすることもなかろうと思われますので、好きなように書きます。
ネタバレが嫌いなひとはここで読むのを止めてください。では始めます。
K点超えの面白さ
自分の総論としては、まず賛否以前にびっくりしました。
まさかこんな脚本をスターウォーズで目にするという目の前の事実がちょっと信じられませんでした。エピソード7やローグワンのgdgdぶりがかわいく見える脚本。エピソード6を観てボバ・フェットのへっぽこな死にっぷりに「あー」と思ったことなど本当に瑣末なことに感じる雑な展開。ジャージャー・ビンクスに怒ったことなど本当に良い思い出。
なんというか従来のスターウォーズのいい加減な脚本のK点を軽々と超えてしまった感じです。
そしてまた意外なことに、コレは僕の予想よりもはるかに面白い映画であったと言えます。
まあその面白さの質が、従来の僕がスターウォーズに求めていたようなワクワクするような冒険譚じゃなくて午後ローのサメ映画のような面白さなんですけどね(笑)。
ぼくは中盤以降の超展開に、爆笑するのを堪えつつ肩をフルフルさせながら観ていましたよ、ええ。
この映画を観て怒ったひと、基本的にあなたは正しい。
でもまぁ怒っても仕方のないことって、世の中にあるよね。
…じゃあそろそろ、記憶に頼りつつ観ていたときの僕の気持ちをつらつらと述べる各論に行こうと思います。ところどころ記憶が怪しいのでシーンは前後しているかも。
ポー無双
まず冒頭の戦闘から。
基本は無茶をするポーが無双しているだけの展開が、さほど爽快感なく続きます。
そして指揮系統も作戦もくそもなく「戦艦を落とせるチャンス」とばかりに爆撃隊が全部出動。
ローグ・ワンで反乱軍が先行する主人公たちを追って将軍らが続いて全軍出撃したときに「ちょ…それ下手を打つと全滅もあるよ?」とか思ったことなど、かわいい展開。
そして爆撃機がほとんど撃墜されたりもたくたしている中、リモコンに手を伸ばすのにもたもたしながらも(唯一の操作系がアレ?バックアップ系ないの?)一隻がスイッチを押すのに成功。
そしてボーリングのボールがざざざーと数十個、戦艦に向けて自由落下します。
うんまあ、スターウォーズの世界って無重量の描写って、基本的にないよね…。
そしてボーリングのボールが着弾すると、ぼこぼこ爆発が起こって戦艦が全壊。なんか火薬の量とかスケールとか無視してません?
この時点でいまいち乗り切れない自分。
そして島に画面は切り替わり、レイとルークの話がしばらく。ここはどうでもいいので送ります。
ああっ!レイア姫が!
そして再び宇宙戦闘に入ると、反乱軍の艦橋が被弾してレイア姫が…あー、まあキャリー・フィッシャーは中の人の年齢的にもう退場するとは思ったけど、こんなところでお亡くなりになるのか…とは思っていました。
そして島。
そして宇宙。宇宙をぷかぷか漂うレイア姫がまだ生きていたどころか、目をくわっと開いて宇宙をひゅーんと飛んで仲間の所に帰るという超展開。
さすがに自分はここで盛大にずっこけて、なんか頭の中でスイッチが切り替わる音がしました。
そっかー…この映画のリアリティ・ラインはここに引いてあるんだー…。
うん、そういえば、スターウォーズって、一番最初のEP4から、宇宙が真空であるっていう描写はどこにもなかったよね…。
むしろ宇宙空間でバンバン音がしていたよね。
デススターから外の空間に吹き抜けで宇宙船がバンバン出入りしていたよね…(あれは何か空気だけ遮断する超テクノロジーを使っているのだと思っていました…うん…)。
レイア姫は生還したものの昏睡状態で、指揮権を穏健派のオバちゃんがとります。首置いてけ星人いくさ馬鹿のポーは不満顔。
そして反乱軍の残りはこの船にいる400名ほどらしいという絶望的な状況。
凸凹コンビの誕生
反乱軍の船はハイパースペースへ逃げても追跡されることが判明したため、燃料を節約するためこのまま通常航行で戦艦を振り切るべく、とろとろと移動することになりました。
そして律義にそれをとろとろと追う戦艦とのゆったりしたレースの始まりです。
あのー…反乱軍にリソースがないのは分かりましたが、ファースト・オーダーには他のリソースがないのでしょうか…別の戦艦1隻なりを奴らの進行方向の手前にハイパージャンプさせればそれで終了なのでは…。よくこの脚本通したなぁ。
誰が見てももう無理ぽな状況のところで、フィンは自分だけトンズラしようと試みますが、そこを反乱軍のソウルを持つエンジニアの女クリーチャーに発見され、すったもんだの末にそのクリーチャーと黒人の凸凹コンビが成立しました。
以後、この映画はこの凸凹コンビがメインで話を引っ張ることになります。
反乱軍がこのように「燃料切れまであと〇時間」という息詰まるレース(笑)を繰り広げている状況におかまいなく、レイは島でゆったりと修業をしています。
瞑想中にカイロ・レンと「君の名は。」ごっこをするのも忘れません。
ハッカーを探せ
凸凹コンビは、ハイパースペースを通しての追跡を行うファースト・オーダーの技術を作動不能にすることを企画して、その技術を持つハッカーを探しに行くことになりました。
これEP4でトラクタービーム切断をしたオビワンへのオマージュなのかな…というのはともかく、ハッカーというのは何でもできるというのはハリウッド映画のお約束。みんな知ってるね。
TV電話でEP7で登場した眼鏡っ娘(生きてたんですね)からハッカーの情報を得る凸凹。ぼくはこの眼鏡っ娘の電話のカメラをいったい誰が持っていたのかが気になってセリフに集中できませんでした。
それはともかく、その凄腕のハッカーというのはカジノ惑星にいて、胸にナントカの花をつけているのが目印だということでした。この忙しいのに凸凹コンビはカジノへ向かいます。
胸に花ってあんた…これ「待ち合わせ」のときの目印じゃないのに、そいつは1年中じぶんの服の胸に花をつけてカジノに居るっていうことなんでしょうか…。
ていうか、多少の目印があろうともいまの地球のラスベガスやマカオの市内で知らない人を探すのも「無理でしょ」と思えるのに「カジノ惑星」からそれで捜索しますか…惑星どころかカジノホテル1軒のフロア内で人探しをやるようなスケール感。
修業中のレイは何かよくわからない暗い所に落ちてアレコレします。てっきりこのシーンでは、奥にダースベイダーの格好をしたレイ自身が待っていてそれと戦うというEP5のオマージュをやるシーンだと思ったのですが違いました。意味あったのかこのシーン。
レイはカイロ・レンに会いに行くことにしました。
えーと、この辺でみんなの好きなアクバー提督が、死に際のカットすら見せずに「死んだ」とだけ聞かされてお亡くなりになっています。
キザ男を発見
そしてカジノ惑星。
凸凹コンビはドタバタしながらカジノで胸に花をつけた男を探します…がホントにそういう格好の奴が居ましたよ。
このカット、カジノの中で一張羅をきて胸に花をつけているキザったらしい二枚目っぽいおっちゃんとそれを囲む美女みたいな、パイレーツ・オブ・カリビアンにでも出てきそうなあまりの安っぽい絵に思わず失笑してしまいましたよ。
さすがはディズニーの作るスターウォーズ。フォックスのスターウォーズとはひとあじ違います。

そして凸凹はこのおっちゃんに仕事を依頼する前に捕まって牢屋に放り込まれます。
そして凸凹が放り込まれた牢屋の中に先客が居て、しかもそいつも凄腕のハッカーであったという小学生が書いたような脚本です。この際だからとコイツに頼む凸凹。キザ男ハッカーを紹介した眼鏡っ娘の立場がありません。
ここでどうぶつ大行進を行ったうえで3人は盗んだ船で惑星カジノを後にします。
スノークとの対決
レイはカイロ・レンに会い、そして一緒にスノークの所に行くことになります。
EP6の終盤を思い起こさせる対決ですが、スノークは手からビリビリ光線でなくテレキネシスの使い手であったようでした(敢えてフォースとは言うまい)。
頼みのライトセーバーも奪われてしまいました。
レイを拘束したうえで、レイの過去をねちねちと言葉攻めをするスノークです。
いっぽう凸凹はハッカーの助けで敵の戦艦に侵入し、追跡装置の無力化を試みますが、結局のところハッカーの裏切りで捕まってしまいます。何がしたかったのかこのハッカー。
そして捕まったフィンの前に現れたのはキャプテン・ファズマ。
前作の「フォースの覚醒」では自分の命惜しさに銃を突き付けられただけで一行をノコノコと大事な部分まで案内して、スターキラーを崩壊させることに直結したA級戦犯です。あれで失脚しないとか本当に人材不足なんですねファースト・オーダー。
そして謁見の間。
ドヤ顔で言葉攻めを続けるスノークの横でカタカタと動くレイのライトセーバー。
えっ…まさかこれだけのトリックで…と思う間もなく次のカットではスノークが胴体をぶった切られてあっさりお亡くなりになりました。
さようならスノーク。僕は貴方のセリフは吹き替え版では是非とも広川太一郎の声でおフランスのざぁます言葉で喋って欲しかったと思いました。
一方で反乱軍側は、こののんびりレースから脱出するのしないだのという仲間割れをまだやっていました。
ポーがおばちゃんからクーデターで指揮権を奪うも、レイアに鎮圧されるなどのドタバタ。
結局のところ、おばちゃんは他のみんなを逃がすために単身で敵艦に突っ込みます。神風特攻の自己犠牲を肯定するのかしないのか、どっちだ。
しかし結局のところ、凸凹コンビがカジノに行って半分くらいの尺を使ったのって、まったく意味がなかったんですね…。
(2023/3/3追記)後に金曜ロードショーでこの映画の「地上波初放送」をした際には、ストーリー紹介のダイジェストではカジノ惑星に一切触れないという暴挙をしたのですが、これがあんまり違和感がなくて、その…。
ファズマの最期
そして凸凹のピンチは、凸凹コンビの居る格納庫が爆発することで救われました。あの場に百人は居たように思えるトルーパーが次のカットでは全員いなくなっていて、キャプテン・ファズマだけになっている逃げ足の速さです。
そしてキャプテン・ファズマとのバトルの末に、キャプテン・ファズマは落下していく最中にマスクの間から睨みつける目だけを見せて炎の中に消えました(さすがに死んだと思う)。
…うーんこの。キャプテン・ファズマといえば、エピソード7で女性高級士官でありながらへっぽこという記号からは、これはもうくっころ要員にしか見えなかったキャラなので、ここはもうちょっとその、せめて死ぬ前にマスクが外れて長髪の金髪ばさっの美女顔を見せるとか、その。
僕らの行き場のない萌え心が残念。
反乱軍の籠城
結局、反乱軍は惑星ナントカに降りて籠城をします。
偽装も何もできていないので逃げ込んだのがバレバレで、そこにファースト・オーダーが地上部隊を下ろします。
援軍のあてもなく、脱出口も確保できていないのに籠城を選ぶとは反乱軍さすがの無計画ぶりです。
ここで地平線にずらっと展開するAT-AT部隊というEP5を思い出させる「ああ、この絵を見せたかったんですね」がよく分かる内容。まあ絵的には嬉しいので許可します。
そしてレイがファルコンで戻ってきてのサービスバトルもあり(レイがどのようにして敵艦からファルコンで戻ったのかのカットがなくて繋がってないと思うんですが…)。
反乱軍が籠城する扉を破壊すべく、ファースト・オーダーが何やらでかい砲を持ち出してきます。
あれは「小型のデス・スター」とも言えそうな火力らしいのですが、そうですか。
そしてフィンがおんぼろのスピーダー部隊を率いてそれを何とかしようと試みるのですが、正直なところこのカットではフィンたちが赤い染料をまきながら飛んでいることの意味がよく分からなくて話に集中できませんでした。
このへん、町山さんなら「コレにはこういう意味が」「あのスピーダーが〇機だったのにもこういう意味が」とか解説してくれるのかなー。
まあとりあえず、そういう絵が撮りたかったんだろうなあという理解にとどめておきます。
そしてフィンは、何とかしてあの砲を封じ込めようとおんぼろスピーダーでバンザイアタックを試みます。観客が「あ、これは死んで大砲を壊すな」と思わせるカット割りの後で、横からクリーチャーが操る機体がフィンの乗機に体当たりしてフィンを救います。
…もっとも結局は壊せなかったその大砲も、「小型のデス・スター」と呼ぶからには反乱軍の居る山ごと問答無用で吹き飛ばす…ような火力でもなんでもなくて、ちょっと扉を焼いただけという、うーんこの。
ルーク・スカイウォーカーの登場
そしていよいよ、この映画の最大の見せ場であるルーク・スカイウォーカーの登場です。
普通の映画ならここで「あんたいつの間にココに来たんだ」という突っ込みが入る所であるし、実際にはそれに対する回答も(珍しく)ある登場なわけなのですが、もはやこの映画をここまで見た我々はその程度の脚本の穴は気にならず、ルークがここに居る意味は考えずに、ただ先行きを見守ることになります。
一方、気絶から覚めたフィンは、自分に機体をぶつけてきて自分を救ったクリーチャーを探します。フィンはほどなく発見できた気絶していたクリーチャーを起こして、言葉を交わした後に熱いベーゼを交わします。
…思いっきり悪いけど、ちょっとこの絵では、華がなさすぎて、つらい。僕はハリウッド映画で黒人や中国人が活躍することは基本、歓迎なんですけど、にしても、その…。
ぼくは最近のハリウッド映画が中国をターゲットにする関係で中国要素を露骨に入れるのは必ずしも否定しないんですけど、もうちょっとその、この役はそれこそジン・ティエンあたりの美人女優じゃダメだったのかなぁと思うのです。中国のひとこれを見て嬉しいのかなぁ。
その後、中の女優の方にバッシングが起こるとか残念な話もあったけど、まあこれ悪いのは脚本で、女優に罪はないよね…。
そして皆の前に姿を現すルーク・スカイウォーカー。
最前線に出ているカイロ・レンはただちに「撃て撃て撃てー!」と全機に命じて、ルークに火力のすべてをしばらくぶちこみ続けます。普通なら肉片も残らない火力ですが、噴煙がおさまった後には、やはり健在であったルーク。
正直なところこのシーンでは、カイロ・レンなり下級士官なりに「…やったか?」と喋らして欲しかったと心の底から思います。こういう所で微妙にカタルシスが得られないこの映画。
個人的には日本アニメへのオマージュとして、ルークが光球に包まれていて欲しかったですね。
ルークが時間稼ぎをしているうちに、一行は早々にここを放棄して脱出することにしました。脱出ルートを確保しての籠城でもなかったので、どうぶつ頼りの行き当たりばったりです。
そして無傷のルークと、降り立ったカイロ・レンが問答。
問答に負けたカイロ・レンはルークをサーベルで胴体をまっぷたつにぶった切りました。
確かに上下がまっぷたつに切断されたはずの信長公はそれから秀吉にゆっくりお茶を入れてから絶命この平然と立つルークはナノマテリアル製ルークが見せた幻影でした。
おちょくられるばかりのカイロ・レン君のメンタルはもうズタズタです。
そして最後の仕事を終えたルークは、島で美しい夕陽を仰ぎながらここでほんとうに絶命します。
ぼくの友人が「いろいろあったがこのシーンで何となく許す気になったが思い違いかもしれない」と言い放った名カットです。
続きはエピソード9でね!
そして反乱軍の残党はファルコンで脱出します。この映画だけでも最初に400人居たという反乱軍がファルコンに全員が乗れるほどに減ってしまいました。
でもそんな一行を励ましてレイアが「仲間はまだ大勢居る」という言葉。
ていうか、てっきり中のひとの事情から、レイアは本作でお亡くなりになると思ったので、この点だけはいささか意外でした。EP9でもCGで出るのかなぁ。
そしてラストカット。
カジノ惑星の厩舎の少年が、しみじみ夕陽を見つめます。
どう見てもルークの種が入っていると思しき顔立ちの子役を見つけてきたのですね。この子が未来のジェダイを担う希望なのでしょうか(つづく)。
そして2年後のエピソード9に続くべく終劇。
脚本家を校舎裏に呼び出して締めたいですね。まあ監督なんすけど。
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