今のマジックのスタンについて思うこと

最近のマジック(マジック・ザ・ギャザリング)で話題の「スタン禁止改訂」のことも考えつつ、今後のスタンのあり方などについて思うこと。

 

議論の方向性

最初に書いちゃいますけど、今ぼくが一番いいたいのは禁止改訂の是非うんぬんよりも「昔のスタンと今のスタンは違うもの」であるという事実をまず踏まえて話をしませんか、ということなんです。
つまりこの2023年春の「スタンの禁止改訂」の是非を論じるうえでは、15年前とか20年前の禁止改訂や「スタン落ち」のことを思い出とかで引き合いに出すの、昔話を楽しみたいのも分かりますけどなんの参考にもならないので建設的な議論をしているつもりなら控えませんか、ということなんですが。

 

理由

ひとことで言えば今はアリーナがあるからなんですけど、もう少しちゃんと書きます。

 

かつての万人の入り口「スタン」

ぼくらがかつて熱中したかもしれないマジックの「スタン」というフォーマットは、次のようなものであったと言えると思います。

  • 紙のマジックをプレイするうえでの入り口である「標準」フォーマット。
  • 初心者からプロまで、店舗から世界大会に至るまでの構築の主戦場。
  • 「普通」の構築プレイヤーである「大半」の人にとっては、紙のマジックと言えばまずもってコレ。みんなこのフォーマットで構築デッキを作って大会に参加してました。
  • そこに「強いデッキ」を持ち込むことは単純に勝利に近づくので、皆が知恵をしぼってデッキを構築し、さらにそこで引っ張りだこになる「スタン構築で強いレア」にはシングル1枚で何千円もの高値がつきました。
  • しかしそのような高額レアも「スタン落ち」で通常は価格は大幅下落。
  • まして2年使わせずに突如の禁止改訂になればパニック。
  • だからその環境の維持にはウイザーズもプレイヤーも最大限の注力をしたうえで、ローテーション落ちする前の「禁止」は極力出さないようにしていた。※高額シングルで買ったレアが即座に暴落するのを好むひとは誰もいません。

当時も僕のようにこういうのに「ついていけない」人間はリミテッドに流れたり、あるいは「スタン落ちした強カードを引き続き使いたい」人のためにレガシーとか「下の環境」に移る人も出ましたが、基本「スタン」とはこういうものであったと思うわけです。
そして僕らはその原理でこの30年、マジックに熱中してきたわけです。
でもこの構図、今はもう見直す必要があるよね、という話でもあります。

 

アリーナから入った人への「スタン」

だってこのように考えると、上記の「かつてのスタン」がスタンであらしめていた要素って、今はほとんどないんじゃないの?と思うわけです。特に「これまでマジックをやってなかった人」を誘導する意味では。

  • いま新規で構築マジックを始める人の入り口は「アリーナ」。
    • 議論の余地ないよね。あ、統率者とリミテッドの話は別でひとつw
  • アリーナではワイルドカードによって、誰でもそれほどおカネをかけずに強い神話レアを4積みしまくったTier-1デッキを組めるし、何万円も払ってスタン落ちの噂に怯えつつシングルを買う必要もないし、性能の劣る安いカードを入れた「妥協デッキ」で我慢する必要もありません。
    • 僕は「強いデッキ」を回したほうが勝ちやすいし、その結果「ガチのマジックってのも面白い」と感じることも多いので、これはとても素晴らしいと思ってます。念のため。
  • で、そのように「アリーナでマジックの面白さ」に目覚めた人が、そのような楽しみを「店舗での紙の対人マジック」で求めたくなった際にどう考えて動くかという話なんですけど…。

でもここで「じゃあひとつ、アリーナで回したコレと同じデッキを紙で作るために、店で何万円もシングルで神話レアを買うことから始めよう」と考えるひと、さすがにそんなに「いねぇだろ」としか言えないと思うんですよ(笑)。ウイザーズだって別にそんなの勧めてないと思います。

 

初心者誘導としての店舗「スタン」

これを考えれば「これから紙の構築を始めたい」ひとにとって、店舗でのスタンがどういうものであると嬉しいかは、すでに見えていると思うんです。

  • 高額神話山積みのガチデッキでなくても楽しめる場所にする。
  • むしろ構築済や、パックで引いた強カードを1枚入れたような「妥協」デッキでもゆるく楽しめる場所にする。
  • まずもって当面の最大の目的は、店舗大会を「紙」での「対人戦」を楽しく遊べる、足を運びたい場所にすることでしょう。

端的に言って、最近ウイザーズが打ち出した「じゃんけんで勝つとプレイマットや良いプロモ」は、大変に素晴らしい企画だと思うんですよ。あれはガチで勝てない人でも足を運ぶ強い動機になるし「1回戦負けたのでドロップ」もなく楽しめます(当然、最終戦まで遊んだ人の中で決勝なしの最終順位で優勝者が決まったあとでの、じゃんけん大会ですよね?)。

 

実力者にも魅力のある「スタン」

ただしその反面、カジュアルなプレイと運だけで終わるのも物足りないんですよ。つまりガチ勢にとってもそれなりに魅力的な場所にする必要があります。特に「プロなどが行く気の起こらない店舗大会」にするのは良くないですね。つまり初心者と実力者が一緒に遊べる場であるのが望ましい。

僕らはかつての自分が大会に出てデッキも腕も足りない未熟者である自覚をしつつ、それでもそのような大会でも腕を見せつけて優勝するプロや実力者などを横目に称えつつ、そのような方々と同じ会場で遊べた喜びを嚙みしめつつ憧れたりしませんでしたか? 僕はしてましたよ。トップ8すら滅多に入れなかったヘタレですけど。

実力者でも足を運びたくなる基本は「上位賞も用意する」でいいんですが、匙加減を間違えると「実力者が初心者を狩る場」になってしまって初心者を遠ざけてしまうものの、そうならない方法は普通に考えられます。たとえば

  • 上位賞を極端に重くしない。
  • 上位大会の権利戦の店舗予選では「権利保持者」は参加できないようにする。

とかですね。ぶっちゃけ「じゃんけんで貰えるプレイマット1枚を優勝者にも1枚」程度でぜんぜん構わないと思うんですけど(笑)。いまの店舗スタンの規模を盛り上げたいのなら、それで充分じゃない?
実力者がそれで足を運ぶに気になるか、というのは常にありますが、基本、初心者であろうとプロであろうと「紙で遊ぶのが楽しい」から大会に行くのだったのでは?と思ってもいます。
店舗スタンで物足りなくなった人なら、紙の大型大会とかに目を向ければいい。

 

高額カードの「スタン落ち」の問題

最後に、もともと話の枕でもあった「この話」にも触れておきます。
ぼくはここまでで「今後、紙のスタン」を店舗で盛り上げるうえでの方向性は明確なんじゃないかと思っています。
実はその観点で言うと、この結論も明白で、それはつまりそんなに気にすることないんじゃないでしょうかということなんですが(笑)。

だって、すでに紙の「スタン」というのは、僕らが参加するうえで高額神話レアを何万円ぶんも買って初めて入り口に立てるような存在じゃないですから。

そもそも、すでにもう僕らはいま、新弾のトップレア級のシングルカードの価値というものを「このカードは将来のモダンとかでも使えるパワー」であることを折り込んでません?
僕ら「このカードは強かったけどスタン落ちなんで暴落する前に売ろう」とかまだやってます?「明らかにカードパワーは不十分なんだけど、スタンではコレがマシだから今はこれを積むしかない」みたいな理由で高騰しているカード、そんなにありますか? いずれも「ない」んじゃないでしょうか。

これは「僕らがもう真剣にスタンをやっていないのでは」という意味ではネガティブな話かもしれませんけど、反面「スタンでBANされたので貯金して高いカードだったのが無駄になった、もうマジックやめる」みたいなことを過剰に心配する必要は「ない」んじゃないでしょうかね。
だから「スタン落ち」を心配する必要もないし、スタンのBANをされても高額神話は紙にならないから気にするな。それよりも皆が楽しく遊べるスタンであることを重視して、ヤバイと思ったら頻繁にBANしていいです。
…まあ、結果的には「いまのウイザーズ」の方針を肯定しているとは思います。

 

結論

そろそろまとめますけど、要するにこういうこと。

・「いまのスタン」は20年くらい前の「スタン」とは別
・店舗スタンはアリーナから「紙のマジック」への誘導路
・初心者と実力者の交流も大事
・さらに紙の道を上りたいなら、パイオニアとかモダンへどうぞ
・「紙のスタンだけガチでやり続ける」ひとは想定しなくていい
・よって「禁止改訂」もそんなに恐れることはない
・紙のスタンを楽しく遊べる場にすることに注力すればいい

だいたい、こんなところで。

(おしまい)


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