とりあえず語りたくなったことをこちらにまとめます。まあ結論は「面白そうだと思ったなら観ろ」なんですが。
ネタバレへの配慮
特に制限をかけていませんが、「知ったら映画がつまらなくなる」ものについては記述していないと思います。むしろ「これは映画を観る前に知っておいたほうがいい」みたいなウソを打ち消すことを主眼に「事前情報はこれくらい知っておけばOK」を強調しています。
総論
- 期待を裏切らず、たいへん面白かったです。
- とりあえずいま流れている情報で「面白そうかな」と思った人なら、観ていいと思います。
- どうせ観るならサウンドがスゴイので劇場でのIMAXでの鑑賞を推奨。
- 予備知識としては、主人公オッペンハイマーが、
- 原爆を開発しマンハッタン計画を成功に導いたひと
- その後の「赤狩り」で酷いいいがかりをつけられて失脚したひと
- 「この映画を楽しむにはこれを知っておかないと」みたいなことを言いやがる映画評論家はガン無視して、おねがい。
- 未見の方への劇場に足を運ぶハードルだけ上げられるの、マジ迷惑。
- それは「このトリビアを知ってればより楽しめる」レベルの話。
- 事前に知らなくても全然オーケー。ていうかそれこそ「それは映画で知ってね」でいいのでは…。
- 必要以上に「難解な映画」みたいなイメージを植え付けたがる映画評論家はスルー推奨。
- まあ「Youはなぜあそこでいきなり全裸に?」みたいな目が点になる難解ポイントもあるんですけど(笑)、そこを無視しても大筋に影響はないと思うので(それこそ評論家の出番でしょ)。
見どころ-科学技術プロジェクト
- 当時の科学史や物理学者の名前をそこそこ知っている人なら、問答無用ですぐ観に行くべき。
- さすがにアインシュタインくらいは知っておいて欲しいかな…程度なので、ハードルは高くないと思います。
- 他にもどっさり名前が出てくるので、そういう所でいちいち反応できる人にとっては最初からトップギアで脳汁出まくり映画(分からなくてもストーリーに関係ないので、聞き流してもよいです)。
- むしろそういうの無関係に、映画で出てくる人物(こいつはこういう立場の軍人で、こいつは弟だったよなとかそういうレベルの話)の顔を覚えておくほうがストーリーの掌握上だいじ。西洋人の顔なんて見分けつかないよレベルで大量に出てきます。ここを見失うと「難解」に感じるかもしれないので、「こいつはこういう立場の人です」な予習は不要だけど画面に注目すべきです。
- 「巨大な極秘プロジェクト」自体にわくわくできる人に超おすすめ。
- そもそも全体として、原爆開発の部分はそういう映画です。
- USAの離れた4か所にそれぞれを分担する巨大施設を建て、それを集積させる中央のロスアラモス(何もない所)に街を1個作るとか、そういうのにワクワクできるならどうぞ。僕はワクワクしっぱなしでした。
- 「科学と技術」にわくわくできる人にはおすすめ。
- ずらりと並んだ科学者名とか、段々と実験用の核爆弾が組み上げられていくプロセスとか、濃縮ウランがだんだんと蓄積されていくプロセスとか、そーゆーので興奮できる人なら。
- もちろんその興奮は核実験の成功シーンでピークに達するわけですが。
- むしろそこがメイン目当てだと、そっから先の査問会議が延々と続く展開は割と「そろそろ終わってくれないかな」になるかも。
見どころ-政治関係
- オッペンハイマーが赤狩りにはめられて失脚する部分。
- 1年前から炎上要素の高かった部分です。
- 正直、僕はこの部分にはあんまり興味はなかったので、これを目当てに観に行く人がいてもいいけど、その人の気持ちでは語れません。
- 当時の「赤狩り」というのがいかに愚かな政治的な流れであったというのはお腹いっぱいに味わえます。
- 基本、最初からオッペンハイマーを追放するつもりで言質を取ろうとするだけの不快な査問会議が延々と続きます。
- 2022年に「あそこでオッペンハイマーを追放したのはあれは間違いだった」という名誉回復がされたようですね。
- 日本での炎上案件であった「ナチスを倒したのであとは日本を降伏させれば終了」でも「東京大空襲の被害」を知りつつ「原爆を落としても日本は降伏しないだろう」と知りつつ、それでも「京都は止めておこう」みたいなこともいいつつ原爆投下自体は中止できなかった部分についても、当然ながら話が出ます。
- 正直、だからってあそこでオッペンハイマーが「やめた」と言えるわけもなくそれは即座に首になるだけの話なので、そこでオッペンハイマーの人道的責任を話題に持ち込んでも仕方ないとおもいます。
- 基本、この映画は「可能な限り史実に忠実」に作ったとは思っていますが、それでも「オッペンハイマーがこう言った」については、言わなかったことの捏造はないと思っていますが「実際の発言」を映画に出さないことによるある程度のイメージ操作はあり得ると思ってますので、この映画ですべてを理解できるとは思っていません。
- まあ「トルーマンが悪い」な話にはしてもいいと思います。
- 正直、だからってあそこでオッペンハイマーが「やめた」と言えるわけもなくそれは即座に首になるだけの話なので、そこでオッペンハイマーの人道的責任を話題に持ち込んでも仕方ないとおもいます。
三位一体(トリニティ)の意味
ここで少しだけ「批評」めいた自分の解釈を加えると、オッペンハイマーがロスアラモスの核実験を「トリニティ(三位一体)」と命名したというのは劇中でも出てくるただの史実ですが、なんでこの名前にしたのかは出てきません(明快に説明されてもいないようです)。 まあテキトーにつけたでもいいんですが、ひとつ「映画的な監督のメッセージの解釈」を加えると、こういうことかなとは思っています。 この映画は、人間オッペンハイマーを描いた映画ですが、それは
- 原爆開発を主導して大成功したひと
- でもその後の赤狩りで失脚したひと
- 家族を作ることには失敗したひと
の三つの側面があるのだ、という話です。 1つ目と2つ目は誰が見てもあからさまなんで説明は不要なんですけど、3番目については「こういう要素もあっての人間オッペンハイマーを描きたかったのかな」な話です。まあただの深読みと考えて貰ってOK。
いや実のところ、この映画の大きな謎である「Youはなぜあそこでいきなり全裸に?」の意味を考えると、結局のところそれは「奥さんと子供がいるのに平然と他に女を作った」「最終的には破局」の、本人の誠実でもなんでもないだらしなさのことを描きたかったのかな、という話になるので。 あれが査問会議の場所で実際にあったことではなく心象風景を描いていることはおよそ明白なので、あるいは「査問会議で心もズタズタに丸裸にされた」ことを表現しているのかな、という「読み」も不可能ではないのですが「でも全裸にならなくてもなあ」と考えると、やはりそれは性的な意味を含めているのかなぁと。まあただの深読みと考えて貰ってもOK(大事なことなので2回言いました)。
「バーベンハイマー」と日本での公開騒動のこと
映画「オッペンハイマー」が実際に公開して、これが「原爆投下による残虐な結果は、少なくとも主人公オッペンハイマーは反対していたよね」「なんでこの内容の映画で、日本公開が危ぶまれることになったの」みたいな感想も散見されます。とても良いことですね。
ただまあ、これに関して述べておきたいのは、やはり去年の夏の「バーベンハイマー」騒動についてなのです。 アレについては、騒動自体は「オッベンハイマー」も「バービー」もどっちも否定したい海外の保守のバカ(海外のネトウヨだろうさ)の誰かが作ったもちろん公式でもない悪意のあるクソコラに、なぜか「海外のバービー公式」が乗ってしまったという「担当者バカ?担当者もネトウヨ?」案件で「日本のバービー公式」が抗議をして謝罪という流れで終わったわけですが…。 ただここで重ねて強調したいのは、「オッベンハイマー」も「バービー」も「両方とも否定したい」という明確な意思を持った人間(まあネトウヨだろう)が映画の公開前から居た事実は認識すべきなんです。 これについては去年の夏にこちらで書きましたけどね。
僕らがこの手の「政治的な映画」に賛否とともに評価を示すのはいいけど、とりあえず
- それは映画の監督なり実際の作品なりをソースにした話なの?
- どこかのバカのフェイクに踊らされてない?
とかいう話は踏まえて欲しいわけなんですよ。
まああれだけ原爆投下に否定的なメッセージを出している映画「オッペンハイマー」にすら「原爆投下の被害描写が映画に出てこない。これはUSAの~」みたいなもはや言いがかりと言って良さそうなものも日本で観測できましたので…。
まあ、どういう感想を持とうと自由ですが、とりあえずイデオロギーのために映画を曲げるべきじゃないよなとは思いました。
ほんじゃーね。
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